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「はじめまして。俺はノールフェン。呼び方はノールでいいよ。みんなそう呼ぶから」
「じゃあ、おれは、ヴァル。って呼んでください」
「うん。ヴァル、だね。よろしく。話は親方さんからきいてるよ。この人……エルデさん用に師匠が作って、その後俺が調整したサブの装備を難なく使って潜ってみせた、って。……それって、本当の話?」
掠れ気味の、丸みのある低めな声。伺うように見上げてきた眼は蒼く、所々に金色の光が散らばって、水底から見上げる光る波みたいだ。
その眼の思った以上の鋭さに、おれはしどろもどろに、はい、とだけ答えた気がする。
それが最初の会話、だった。
身体データを取って、それ以外にもいくつか質問をされて、事務的と言えば事務的なやりとりだけでその日は終わったはずだ。
後日呼び出されてから数日の間は、仕事が終わった後ノールの工房に通い詰める日が続いた。
自分専用の装備を作ってもらっているわけだから、多少疲れていてもそこへ通うことは苦ではなかった。海の底へ潜る採掘師のいる海底近くの街から、中層域に集中している技師街まで上がるのはそこそこ距離があったとしても。
むしろ装備が出来上がっていく頃には、ノール個人に会うことも含めて通うことが楽しくなってきていたくらいだ。
だから、装備の最終チェックの日の事は良く覚えている。
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