泡沫(うたかた)と海鳴りの星

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「俺、個人の装備一式作るのこれが初めてなんだ」  出来上がった装備の部品を手際良く組み立てつつ、微調整も同時進行。忙しなく動く手先。視線を合わせないままそう零したノールの背中に、装備が出来上がるのを座って待つしかできずにいたおれは思わず、えっ、と驚きの声を向けてしまった。 「初めてって……」 「あからさまに不安な声出すなよ。お前んとこの親方さんの装備みたいに師匠の仕事引き継いでメンテナンスしたり、希望があればアレンジしたり、他の技師と一緒に装置だけ作ることは何度もあったの。それに、プログラムと設計だけなら何度も組み立ててきたんだよ。でも、一からひとりで設計して、ここまで人が動かせるように作ったのは、これが初ってこと」  光栄に思えよ。なんて言う口元は、若干ぎこちない笑みを浮かべていた。 「今まで、そういう相手はいなかったの? 貴方の技術なら、チームを組みたいって人もいただろうに」  おれがそう言えば、ノールは首を横に振った。 「そういう声をかけられたことが無かったわけじゃない。でも、話がうまく進まなかったんだ」
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