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「そんなふうには思ってないよ」
おれは率直にそう返す。
「装置の性能を高めたいってノールの気持ちは調整してる中でよく伝わってきてたよ。それが、今おれら見習いが使ってる一般的な装備に比べるとかなり独創的なつくりだなっていうのも。でも、それでもまだ、おれが動きやすいように合わせて抑えてくれてるのは仮装着してるときにわかってたし。……そこまでできる人を、やっていけない人だ、なんてとても言えないって」
「……ヴァル、お前」
「採掘師は技師の作る装備が無きゃ、そもそも持ってる採掘師の適性を発揮できない。性格だとか技師の技術とおれらの適性が合う合わないは別としても、技師の能力には敬意を払え、って親方はおれに教えてくれたよ。採掘師の中には技師を兼ねてて全部自前で揃えちゃうような化け物みたいな人もいるけどさ、それで成功してる人はそう多くないでしょ。それなのに、貴方の作る装置が自分に合わないってだけで貴方の技術すら見下すようなやつは余所の技師の前でもおんなじような文句言うって、絶対」
そういう人を指して、お前なんか泡になっちまえ、って言うのが正しいんだろうね。おれが笑ってそう言うと、ノールもまた照れくさそうに笑っていた。
そんな笑顔を見たのはその日が初めてだった。だからつい口走ったのが良くなかった。
「笑った顔、可愛いんだね。貴方は」
言えば、ノールの顔は真っ赤に変わる。口を開けば怒号が飛んだ。
「――っ、んなこと言ってねえで、最終チェック! そこにある装置つけて、そっちの部屋入って待機してろ!」
「あっ、あの、ごめんっ、はい、すぐに行きます! ちょ、インカム投げないで!」
その最終チェックだ。
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