泡沫(うたかた)と海鳴りの星

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 部屋を仕切るガラスの窓越し。ノールの眼が、照れ混ざりの怒りのものから、驚きに変わり、そしてたぶん喜びに輝きだすまでの一瞬は、おれは一生忘れられないだろう。 「……ヴァル」 「はい?」  その後、インカムに届いたノールの震える声も。 「すごい、すごいよお前! 潜ってすらいないのにここまで理想的な数値に近づいたの、初めでだ!」  ノール曰く。  装備はおれに合わせて調整した部分はほぼ無かったのだという。  合わせたのは身体のサイズと、生存機能に関わる部分だけ。それ以外の装置のプログラムは、ノールのこだわりを盛り込んだものだった。という話だ。  他の採掘師が調整段階で音を上げたというノールのクセの強さ部分も、おれにはさほど気になるほどじゃなく、むしろそのクセを掴んでしまえば一般的な装備よりも機能性は高くなるんじゃないか、そう思えるくらいだった。  それでも気になるところは調整をして貰って、さらにテストを重ね、装備が本格的に実戦に使えるようになる頃には、おれたちは必然的にチームを組んで行動するようになっていた。
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