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「そうだ。装備の方はどうだ。使いづらい、とか、気になるところ出てないか?」
「ううん。今のところ不調も不満も無いよ」
おれはノールの作る装備一式には言った通りに不満は無かったし、その頃には愛着もかなりできていた。多少思い通りにならない部分があっても、それを含めてノールの技術には尊敬を感じていたくらいだ。
だからそれを偽りなく伝える事に抵抗はなかった。
「……というか、慣れてきたとこもあるから、むしろ貴方が変えたいところがあるなら変えてみて欲しいかな」
「え、いいのか? そう言うなら、俺、本気で変えるぞ?」
それを伝えるたび、ノールの表情が嬉しそうに変わるのを見るのも好きだったから。
そこで、装置だけじゃなく、技術だけでもなく、それそのもの。制作者に対しての強めな感情も含まれているとはっきり意識したんだと思う。
「うん、おれはそれに合わせてやってみたい。最近、結構楽しくなってきてるんだ、貴方の作る装置のクセと向き合うの。こんな複雑な装置に付き合えるのもおれだけだぞー! なんて誇らしかったりするんだよ。……それが掴めたら、貴方ともっと近づけた気もするし。ね」
「……っ!」
わざとらしくそんな事を言葉に混ぜてみるとわかりやすく照れる顔も、好きだなと思えて。
「それなら、少しいじりたいところがあったから、そこ、変えて、みるよ」
脈なしというわけじゃなさそう、ではあったから余計に、距離感が近づいていたんだと思う。
「お願いします。――あ、でも、採掘箇所について言えば、あとはもう少し深く潜るか、街から遠い別の海域まで移動するか、しかないみたいだ。チーム組んでる以上は他人の掘ってる鉱脈には触れないから。……だけど」
「なに。だけど?」
「どっちも、当たらなければ損がでかいと思う。今のチームの予算じゃ、できても一回か、二回ってところだろうって組合の調査船担当者が言ってたから」
「そっか、遠出するにしても深部に潜るにしても、いつもと違う船出さなきゃならないもんなぁ。あいつら借りるの結構高いんだっけ……」
「ああ、あとね、その船、金額もそうなんだけど。今そっち系の船がまとめてメンテナンス中でさ、すぐって訳にもいかないんだって。まだ何日かかかるらしいんだ。それが終わればすぐ出せるって言ってる」
「なら、それまで待機か」
「そうなるね」
ノールとこうして一緒に先を考えて進めていく毎日は、複雑な感情を抜きにしても楽しかった。
そういう中で、少しだけ先に動いたのは。仕事よりも、関係性の方だったか。
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