泡沫(うたかた)と海鳴りの星

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「じゃあ、俺は装置のメンテナンスを……」  そう言って早速仕事モードに切り替わろうとするノールの手を取って、引き留める。 「ねえ、ノール。貴方が仕事と趣味を両立させて装置に向き合う方が好きなのは否定しないよ。だけどさ、ちょっと息抜きする気はない?」 「息抜き? 何すんのさ」 「遊びに行こう、ってこと。――丁度今夜、ルクススまでの船が出るんだ。帰りはこっちの時間で明日の早朝になっちゃうけど」  おれは手を差し出して、誘いをかける。  ルクススは惑星ムーサから最も近い、ハブ空港を持つ都市型の人工衛星都市だ。大企業のオフィスから、娯楽施設、同じ銀河の中から集められた珍しい品を取りそろえた有名な店舗がひしめき合う。ムーサの『人魚』たちも憧れる、大きくて眩しい賑やかな星のひとつ。  そんなの他の誰かと行けば良いとか返されるかもしれないと、内心不安を抱えながら、おれは問いかけた。 「どう、かな……」  ノールは悩んでいるような、困っているような、そういう表情だった。こっちはこっちで焦りとか不安とか、多少の下心みたいなものが顔に出ていたと思う。  嫌なら断ってくれてもいいんだと付け足して促すと、ノールは躊躇いがちに答えてくれた。 「ま、お前がそう言うなら、付き合っても良いよ。……一晩だけならな」 「!」  手を取られて、舞い上がったのは言うまでも無い。
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