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計画は急ごしらえ。それでも思いつく限り、懐の許す限りの贅沢をした。
おれがそのとき思いつく限りだから、大して贅沢でも無かったとは思う。
普段口にしない食べ物やアルコールを飲み食いしては、美味いだとか不味いだとか好き勝手に言い合ったり、ムーサの街の気候には合わない作りではあったけど、流行だという衣服を見て回ったり。最新型の浮遊車や、宇宙船の展示を眺めたり。
華々しい衣装を着た女性達のショーなんかも、ちょっとだけ楽しんでみたりして。
クラクラするような時間が過ぎて、気付けば戻りの船が出る時刻が差し迫っていた。
もっと一緒に、仕事のことも忘れて、傍に居られたらいいのに。なんて名残惜しく思っていたところに、だ。誤解を招くような一言が降ったものだから、慌てたよ。
「ヴァル、時間まで少し休憩しないか? 俺良い所知ってるから」
「えっ、あ、……イインデスカ……?」
「なっ……! 何、お前変な想像してんだっ、ばか、そういう意味じゃねえよ。言葉通り取れって! お前だいぶ疲れてんじゃないのか」
ノールは焦ったようにそう言って、今度はむこうから手を引いてくれた。
隠さず言えば、確かにはしゃぎすぎてくたびれてはいた。楽しさの方が勝って気にするほどのことではなくても、かなり調子に乗っていたところはあったから。
それを見透かされていたんだろう、年上の余裕ってやつなのか、ノールは笑って先を行く。
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