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爪先に意識を向けると、水を蹴るように空気を踏める。何度かそれを繰り返し、加速する身体を互いに捕えて腕を引き寄せたら、知らず距離が近くなる。
仕事仲間に近すぎないかと言われている近さよりも、ずっと近くなっていた。
ドームの中は薄暗く、他にも数人の人がいるということがわかる程度で誰かまではわからない。微かに聞こえる波か風のような自然音が流れていて、話し声も大声でも出さない限り人の耳には届かないだろう。
静かで、それでいて遠くに何かの気配だけはある。見上げれば夜空の星、肌に触れるのは人工的とはいえ、優しい風。
その雰囲気の中で捕えた腕を離せなくて、おれは無重力の浮遊感にかこつけてノールを背後からそっと抱きしめていた。
一瞬肩が跳ねるも、ノールはそのまま抵抗せず収まってくれた。おれの肩に頭を乗せて腕の中でゆっくり息を吐いて、力が抜けていくのを感じた。
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