泡沫(うたかた)と海鳴りの星

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 愚痴付いても仕方ない事を口の中でもごもごとさせて飲み込んでから、おれはため息を吐く。 「……というかあの人、いまどこにいるんだ」  色々あって、おれが惑星ムーサを出てから数年が過ぎていた。ノールもその後大きな仕事を請け負って星を離れたようだ。というのは何年か前に本人から知らせが届いたので知っている。  連絡はごくたまに、文字だけのやりとりで近況報告をする程度で続いていた。とは言うものの、顔は見ないし、声も聞いていない。新しい仕事に就いてからはずっと何の連絡も出来ない期間が続いていて、とうとうそんなか細い縁も切れてしまうのかと思える時間が過ぎていたところだ。  時間の数え方は、人類が発生した地球という星のそれと同じ。  一日が二十四時間で、一年は約三百六十日。星が違えば感覚はだいぶズレてしまうものでも、時間の刻みかただけは人類が捨てなかったもののひとつとして残っている。  星間飛行が可能になる以前と比べて人類の肉体的寿命は五十年ほど延びたらしいとは言え、確実に時間を重ねたと思える数年は、決して短い時間とは言えないだろう。 「あの後、別の星でおれより相性のいい相手が見つかったとかって話があっただろ。そこで技師の腕認められて、かなり名が知れ渡ってたじゃないか。……それなのに、今更、おれなのか?」
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