薔薇に刻まれた願い

第3話 文化祭準備

澄は文化祭の準備で賑やかな教室の中にいたが、心の中には不安が渦巻いていた。クラスメートたちは楽しそうに話し合い、笑い合っている。しかし、澄は自分がその輪に入ることができず、ただ一人で席に座っていた。

リリアンは澄のそばに寄り添い、優しく声をかけた。「大丈夫、澄？君の思いをみんなに伝えたら、きっと受け入れてくれるわ。」

澄はリリアンの言葉に少し勇気をもらったものの、内心は戸惑いを隠せなかった。彼は過去のトラウマを引きずり、クラスメートたちの視線が怖かったのだ。周りの楽しそうな声が、逆に自分を孤独に感じさせた。

「でも、どうやって話しかければいいのか……」澄は不安げに呟いた。

「まずは、気軽に話しかけてみて。共通の話題を探すのがいいかも。」リリアンは励ますように微笑んだ。彼女の優しさが澄の心に温かさをもたらし、彼は少しずつ前向きになっていった。

勇気を出して、澄はクラスメートたちのグループに近づいた。彼の心臓は高鳴り、手のひらは汗ばむ。「あの……皆、何をしてるの？」

振り返ったクラスメートたちは、最初は驚いた様子だったが、徐々に澄に向けて笑顔を見せた。「お、黒波！お前も来たか！これから、文化祭の準備で模擬店を作るんだ。手伝ってくれないか？」

澄は思わず驚いた。「え、僕が？」

「もちろん！お前が来てくれると、みんな嬉しいよ！」一人の友達が笑顔で言った。

澄はその言葉に心が温かくなり、少しずつ緊張がほぐれていった。「じゃあ、手伝うよ。」自分の言葉に驚きながらも、彼は仲間に入る決意をした。

その後、澄はクラスメートたちと共に準備を進める中で、リリアンの助けも受けながら、徐々に彼らとの距離を縮めていった。みんなで楽しく話し合い、時折笑い合う中で、澄は自分の心が軽くなるのを感じた。

「見て、澄。あなたが勇気を出して一歩踏み出したから、クラスメートたちとつながることができたのね。」リリアンが微笑みながら言った。

「そうだね……こんなにも楽しい時間を過ごせるなんて、思ってもみなかった。」澄は心からの笑顔を浮かべた。

その瞬間、澄は自分の中に新たな感情が芽生えていることに気づいた。リリアンが傍にいてくれるからこそ、彼はこんなにも勇気を持てたのだ。彼女に惹かれていく気持ちが、心の奥から湧き上がるように感じられた。

「リリアン、君のおかげで、僕は本当に変わることができた。ありがとう。」澄は感謝の気持ちを込めて言った。

リリアンは嬉しそうに微笑み、「これからも一緒にいるから、どんなことでも乗り越えていこうね。」と応えた。

澄は彼女の言葉に心を温められ、未来への希望を抱いた。彼はリリアンと共に、これからの道を歩んでいく決意を新たにしたのだった。