第1話 不思議な少女と僕の過去

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第1話 不思議な少女と僕の過去

「ふわ〜り、ふわ〜り、甘い薔薇の匂いが僕を包む。こんな乙女のようなことを考えている僕は黒波澄、十八歳。女顔と華奢な体がコンプレックスだ。周りの視線が怖くて、学校ではいつも自分を隠している。」 「澄、何してるの?」突然、母の声が響き、穏やかな日常を引き戻す。母はいつも僕を気にかけてくれているが、僕は心の中で孤独を感じていた。 「あ、母さん。今ね、薔薇を部屋に飾ろうと思って。」そう言いながら、僕は慎重に薔薇の棘を避けようとしたが、うっかり手を刺してしまった。「痛っ!」慌てて棘を抜いた瞬間、どこからか声が聞こえてきた。 『やっと見つけた……私の器。』 「え?何?どこ?」周囲を見回すが、声はどこからも聞こえないようだ。 『私の声はあなたにしか聞こえないわ。』 「君は誰なの?」興味と恐怖が入り混じる。 『私はリリアン、あなたが手に持つ薔薇よ。』 その瞬間、手の中の薔薇が光を放ち、徐々に形を変え始めた。光が収まると、美しい少女がそこに立っていた。彼女は長い金色の髪を持ち、優雅なドレスに身を包んでいた。「あ、あの……」 「私はリリアン。あなたの願いを叶えるために生まれてきたの。」少女は優しく微笑む。彼女の存在はまるで夢の中のようで、澄は心を奪われた。 「私の願い?」澄は戸惑う。「特に無いんだけど……」 リリアンは少し悲しそうな表情をした。「本当に無いの?」 「う、うん。」 「そうなんだ…でも私には君の本心も分かるからね」 「君を見ていると気持ちも暗くモヤモヤした気持ちでしょ?」 「澄、 あなたの心の中にはまだ解決しきれていないものがあるわ。それを私と一緒に見つけてみない?」リリアンは柔らかい手を差し出した。彼女の手には温かさがあり、澄はその優しさに少しずつ引き込まれていった。 澄はその言葉に不安を覚えたが、心の奥にある何かが彼を引き寄せているように感じた。「何があるの?」 「あなたの過去、そして心の中のトラウマ。私と一緒にそれを解決していきましょう。」 「どうやって?」 「私の力に任せなさい!」 リリアンは微笑み、澄の手をしっかりと握った。「さあ、私の力であなたの心の世界に旅をしましょう。」 リリアンがそう言葉にすると一瞬のうちに、澄は薔薇の香りに包まれ、異なる景色に立っていた。周囲は美しい色とりどりの薔薇が咲き乱れ、空は柔らかな光に満ちていた。しかし、心の奥には不安が広がっていた。 「ここは……僕の記憶の中?」 「そうよ。まずは、あなたの過去の出来事を振り返ってみましょう。」リリアンは目の前に浮かぶ幻影を指さした。そこには、幼い日の澄が、同級生にからかわれている姿があった。 「やめて!僕は普通だよ!」小さな澄が涙を流しながら叫ぶ。その姿は、澄の心に深い傷を残した瞬間だった。澄はその光景を見つめると、自分の胸が締め付けられるような痛みを感じた。 「この出来事が、あなたに深い傷を残したのね。」リリアンが言う。 「そうだ……それ以来、周りの目が気になって、どうしても自分を隠さなきゃいけないと思っていた。」澄はその光景を見つめながら、心の奥にあった感情が押し寄せてくるのを感じた。 「でも、もう過去の自分を責める必要はないわ。あなたはその時、精一杯の自分を守ろうとしていたのよ。」リリアンは優しく澄の手を握りしめる。 澄はその言葉に少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。「でも、どうやってこの痛みを消せるの?」 「この出来事を受け入れるだけではなく、あなた自身が過去を変えることができるの。勇気を持って、あなたの意志で行動してみましょう。」 澄はリリアンの言葉に驚いた。「さっき詳しく聞いてなかったけど過去を変えるって、どうやって?」 「そのためには、あなたが実際に過去の出来事の中に入り込み、その時の自分に影響を与えるの。」 澄はドキドキしながら頷いた。「うう、ま、まぁやってみる..」 僕はこのリリアンと言う少女に何故か僕の人生を変えられるような気がしてきた。
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