夏祭り

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「のんは?今日、来ないの?」 心臓がどくん、とした。 口を開くけれど、言葉が出ない。 「その浴衣、のんチョイスだろ。 そういうはっきりした色彩、いかにものんらしい」 軽く、苦笑いできた。 そうだよ、のんが選んでくれたんだよと、伝わる。 「すごく似合ってるよ。 これだけ綺麗にして寄越したんだから、絶対来るだろ。自分が来ないなら浴衣禁止にしてるはずだもんな」 「のん、俺来んの知ってる?今日は空気扱いしねえで欲しいなーー」 どうしても、言葉を返せない。 一言でも喋ったら、唯くんの目の前で泣き出してしまいそうなくらい、涙がこみ上げてきていた。 「ゆいーーー!パパ達こっちあつまってんぞ!」 園庭の中央、クラスごとの子供神輿が集められたところから聞こえる元気な叫び声。 「はは、煌河のやつ。じゃあ、俺行くわ。 引き止めてごめん、きぃ。 ……じゃなかったのぞみ先生、受付もどって?」 ひらひらと手を振り、「おーー悪りい、」と煌河くんのもとに歩いていく。 ホッと安堵し、涙が瞼の奥で引いていった。 けれどもちろん、気持ちは沈んだまま。
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