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無表情になったのんが、スマホをポケットにしまった。
じ、っとハンバーグを見つめ、徐に顔を上げ、私をじ、っと見つめてくる。
「───それ、言いたくて?」
「っ、のん、」
ごめんなさい、と謝りたかった。
けれどそれはあまりに軽率な言葉だと、瞬時に思った。
そんなひとことで片付けられない。
のんを、深く傷つけてしまった───
最後までちゃんと説明出来ていないし、今回も名前を出さなかった。
けれど、言いたかったことはすぐにわかったのだろう。だからこその、この反応。
「今日はもう、帰ってくれる」
怒りも悲しみも、なんの色も乗せないその表情の無い言葉に、何も返すことが出来ず、私は黙ってその場を立ち去ることしか出来なかった。
のんが、私のことですぐにご機嫌になってくれるから。
いい気になって、それを利用した。
いつもと違う私の甘えた態度や特別なお料理は、自分をただ労うだけのものや愛情ではなく、全て唯くんのためだったと、のんは解釈したはず。
ごめんね。でも違うんだよ。
のんが来てくれる、園の夏祭りをすごく楽しみにしていたの。
それを、唯くんが一保護者として来ることで、不穏にしたくなかったんだよ。
ただそれだけだったのに、どうして上手く伝えられなかったんだろう。
結局のんとはそれっきりで、土曜日の夏祭り当日の朝を迎えることになってしまった。
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