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「────のん、」
「これぜんぶ、きぃが描いたんだろ。
すげーーよなあ。あ、それこないだのミュージアムのキャラクターじゃん」
なんで。
どうして、来てくれたの。
「美容院で髪セットしてもらって。気合い入れ過ぎて遅くなったわ」
今までと少しニュアンスの違うカラーを入れたっぽい。
前髪は掻き上げるようにセットされててオールバックになっている。
夏向けにサイドも短めにカットしたようで、最近は少し伸びて隠れていた耳も出ていた。
額と耳を見せるだけで、これだけの色気を醸し出すんだとこんな時でも思わされる。
「慌ててタクシーで来て、さっき裏門から入ってきたとこ。
ちゃんと正門から入って受付しなさい、参加者のリボンもつけないで、私がいなかったらあなた不審者扱いよ、って大木先生に怒られた。
あの先生相変わらずな」
そして言わずもがな、浴衣がすごくすごく似合ってる。
「……ごめんな、ガキみてえに臍曲げて」
「っ、のん、」
どうして、のんが謝るの。
謝るのは、私のほうだよ。
私のことを、今度は優しい目で見つめながら両頬をむにむにとつまんだ。
「ホラ笑えよ?お面なんかで顔隠すんじゃねえぞ」
「のん、私っ、」
「わかってっから。あとでゆっくり話そ。
子供たち待ってんじゃん、行っといで」
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