夏祭り

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「今日はウチな」 そのまま、のんの家に誘導される。 「喉乾いたろ」と冷蔵庫から缶ビールを持ってきてくれた。 「今日頑張ってたもんな、おつかれさま」 プシュ、とプルタブを開けて、缶同士をこつんと合わせて乾杯。 煽るように飲むのんの喉仏が動くのをぼんやりと見つめながら、私も缶に口を付けた。 のんの言う通り喉が乾いていたせいもあり、すぐにお互い一缶を空けてしまう。 しばらくお互いに沈黙が続いて。 ソファに隣り合って座ったのんの顔をちらりと見やった。 すぐに気付かれて「ナニ?」と口角を上げ流し目をよこされる。 「おでこ、出してるのいいね」 「んーそう?」 「ちょっとキスしてみたい。いい?」 そんなこと思ったり言っちゃったりするのは、きっと少なからず酔っているからだと思う。 「おー、いくらでもどーーぞ?」 わざわざ私の顔の前におでこを突き出してくれる。 皺ひとつない綺麗なその額に、唇を軽く当てた。 「ハハ、くすぐったい」 「もうちょっと」 せっかくいくらでも、と言われたから、さっきよりもう少し強めに押し当てる。 そして3回目、最後はチュ、とリップ音を立てて終わらせた。 「うん、なんか満足した。ありがと」 「俺もそれやってみたい。いい?」 え、おでこにキスを? 「あー、うん。どうぞ?」 私の返事に緩く笑ったのんが、額にかかった前髪を上げてちゅっ、と唇を落としてくる。 「や、くすぐったい」 ほんとにくすぐったくて、へらっと笑ってしまう。 「これなんか癖になるな」 ちゅ、ちゅ、と何度も口付けられて、その間ずっとふふふと笑っていた。 くすぐったくて、幸せで。
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