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「前に落とし物を届けたらこの子の物で、それ以来、たまにこうやって話しかけてくるだけだよ」
弟がそっけなくいうけれど、なんだかうれしそうでもあった。
「おい、美樹、勝手にどっか行かんで」
そういって、こちらに来たのは、諏訪だった。
やっぱり諏訪の妹さんだったのか!
わたしと諏訪は、お互いににらみあった。
それから諏訪は、「妹がすみませんでした」と頭を下げ、美樹ちゃんを連れて行ってしまった。
あー、嫌な顔見たなあ。
「なんだん、あんた知樹くんと仲悪いだかん?」
母がそう聞いてくる。
「べっつにー。諏訪は、砂浜で走るような変人だから近づかんだけ」
すると、父がぽつりという。
「砂浜で走るの、大変だに。砂に足がとられるもんでうまく走れんだよ」
「へぇ。そうなんだ……」
わたしはそういって、諏訪が海外沿いを走っていたことを思いだす。
あれはもしかして……走る練習だったのかな?
諏訪は、もともと運動神経がいいから、練習しなくても速いんじゃないの?
そこまで考えてハッとする。
あんな奴、知らない!
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