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「愛奈が喫茶店行かんだなんて、明日は雪でも降るかやー」
母がそう言って笑った。
わたしはむぅっと頬をふくらませた。
「今は四月だで雪なんか降らんよ……」
「そんなのわかっとるよ。あんたが、モーニングに行きたがらんってのが珍しいってこと」
母はそれだけいうと、「愛奈が行きたくなっていうで、お父さんとケンちゃんと行ってくるでね」と家族を連れて家を出た。
車のエンジン音が遠ざかる。
すると、途端に家の中は静かになった。
わたしは、はあっとため息をつく。
それから手近にあった座布団を、畳にたたきつける。
「ぜーんぶ、諏訪が悪いっ!」
畳に諏訪の意地悪で嫌味ったらしい顔を浮かべ、座布団でバンバン叩いた。
喫茶店のモーニング、特に「オレンジ」のモーニングが大好きなわたし。
それなのに、喫茶店に行けない理由。
それはクラスメイトの諏訪智樹のせいだった。
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