さよならモーニング

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「みんなそろっとるかー?」  気づけば一時限目の体育の授業。  体育の先生がわたしたちを見てそういった。  今日は運動会の練習だ。  モーニングに行けないことも嫌だけど、私にはもう一つ、懸案事項があった。 「今から運動会の練習をはじめるぞー!」  体育の先生の声がグラウンドに響く。 「今日は、『豊川くだり』の練習だ。みんな順番に並べよー」  先生の言葉に、みんな順番に上体をかがめる体制で一列になる。  馬とびの馬の状態だ。    うちの小学校には運動会の種目に、「豊川渡り」というものがある。  生徒が一列に馬とびの馬になり、その上をクラスで一番体重が軽くて運動神経の良い子が走っていくのだ  上を走られた馬側の生徒は、列の最後尾に並んでまた新たな馬になる。  それをつなげ、距離を競うというもの。  うちのクラスの一番体重が軽くて、運動神経が良いといえば……。 「八幡(やわた)、ちゃんと馬になれよ」  そういって挑発的な表情でこちらを見てくるのは、諏訪だった。  そう。諏訪は「豊川くだり」で、みんなの上を走る役。  なんでこいつに踏まれなければいけないだろう、とため息。  諏訪に踏まれるのがすごく嫌。  それだけではなく、自分の運動音痴がすごく嫌。  豊川くだりは、乗られた瞬間に全速力で走らなければいけない。  わたしは足が遅いので、この競技は嫌いだ。  というか運動音痴だからどの競技も好きじゃない。  だから、来月の運動会が憂鬱でしかたがない。  リレーの選手も障害物競走も出場回避できたのに……。  あーあ、これさえなければ……。 「運動会、絶対に優勝するぞ!」  男子たちは、諏訪を筆頭に盛り上がっている。  いいよね、生まれつき運動神経がいい人はさあ。  運動会、中止にならないかなあ。  そして二度とやらなくていいよ。
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