さよならモーニング

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「魚くさーい」  私がそういうと、母が怒ったようにこちらを見る。 「そんなこと言うもんじゃないに! 魚はいい匂いだら。ねえ、お父さん」 「魚の匂いなんかせんよ」 「お父さんはタバコ吸い過ぎで鼻まで変になっとるだら」 「姉ちゃんなんだんそれ! お父さん鼻変だってー」  弟が腹を抱えて笑う。  父は苦笑いをし、母は「煙草減らしん」とつぶやく。  わたしはそれを見て弟といっしょになって笑った。  今日は、ラグーナテンボスに来ている。  遊園地ではなく、フェスティバルマーケットで買い物だ。  ここ数週間、モーニングへ行きたがらないわたしを心配した両親が、今週末の土曜日は蒲郡の喫茶店に連れてきてくれて、久しぶりにモーニングを食べた。  お気に入りの喫茶店のモーニングとは違い、トースト、サラダ、ゆでたまご、ベーコンとシンプルなものだったけれど、でも、やっぱりモーニングは体にも心にも良い気がする。  こっちなら、諏訪もいなかった。  ああ、なんて平和!    アパレルショップや雑貨を見て、おさかな市場で母が熱心に魚を選ぶ。 「モーニング食べたでお昼は軽くでいいと思ったけど、今日は足りんかったね」  母の言葉に、私はうなずく。  モーニングを食べた日はお昼は軽く済ませる、というのは我が家のルール。  十時過ぎにモーニングを食べる時は朝昼兼用になることもある。  だけど、それはモーニングセットの品数が多い時や、一品の量が多い時。  今日はシンプルモーニングだったから、きっちりお腹が減っている。  なにか食べたいなあ。  すると、ガラス張りの店で、イカを豪快に挟んで焼いているところが見えた。  香ばしい匂いに、お腹がグーッと鳴る。 「わたし、イカの姿焼き食べたい」と母にいうと、「あんたそんなもん食べたら昼食べれんに……。でも美味しそうだね」と財布を出す。  わたしと母は、イカの姿焼きを半分こすることした。  おさかな広場を出ると、父と弟と合流。 「あー、アイス食べとるー!」  二人してアイスを食べる父と弟に、母がいう。 「あんたはイカ買っただら」 「魚臭いじゃなかっただかん」と父。 「お姉ちゃんも鼻変になっただらー!」と笑う弟。  わたしは、「まあいいや」とスキップで店を出た。
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