君と始める最後の恋

Prologue

『今日から営業2課でお世話になります！

桜庭(さくらば) 郁(いく)です！

やる気だけはあります！

よろしくお願いします！』

そうハツラツと元気に挨拶をする私は先程名乗った通りである。

営業2課の補佐として配属された。

この度春からこの会社に入社して、営業2課の島の前で挨拶をして暖かい拍手で迎え入れられる。

また別の島では私の挨拶なんて興味もなさそうに慌ただしく回っていて、少し寂しくはありつつもこんなもんかと社会を実感する。

「はい、桜庭さんね。分からないことあったら、指導係に聞いてね。そうだなぁ、指導係は…。一ノ瀬くん。」

「は、い。」

ほんの少し遠くから少しだけ驚いたような男の人の声が聞こえてくる。

その男の人の声の方を見ると、髪はサラサラで暗めの色で眼鏡をかけている。

眼鏡をかけていて、隠れている部分があったとしても分かる綺麗な顔。

男性の方であるのは分かるんだけど、立ち上がった姿がスタイルも良くてかなり細身である。

身長も170後半と言ったところだろうか。

「一ノ瀬くん、この子頼むね。」

「は、僕がですか？」

「うん、君は入って1年だけど優秀だから。」

「光栄です。でも、僕には少し荷が重いような」

「まあ、そう言わずやって見てよ」

今、その本人の目の前でお荷物の押しつけ合いみたいな会話が始まっている。

「(私、やる気と根性しかないですけどそんな押しつけ合いしなくても…)」

なんだか複雑ではある。

課長は“一ノ瀬”と呼ばれた恐らく1つ上である先輩に私を預けてそそくさとデスクに戻ってしまった。