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振り返ると先輩が私の腕を捕まえたまま離そうとしない。
空いている手でスマホを取り出すと誰かに電話を掛ける。
「兄さん。見つかった、沙羅。近くに居るから早く迎えに来て。俺は郁送らなきゃいけないから。」
何で、何で沙羅さんよりこっちに来るの。
信じらんない、何考えてるの。
「本当に、大丈夫ですから!」
「沙羅は迎えに来てくれる人いるんだから。普通に考えて君の方が送られなきゃいけないでしょ。だから少し待って。」
「良いですって!」
「うるさい」
うるさいって…、そんな言い方あるか!
沙羅さんは私と先輩を見て何やら感動した様な表情をしている。
沙羅さんもきっと何か勘違いをしている。
本当にすぐに充さんは走ってきた。
「沙羅!良かった…、郁ちゃんも傍に居てくれてありがとう。類も、ありがとうな。」
「本当、2人でもっとよく話し合いなよ。」
「うん、帰ろう。沙羅。」
そう言って沙羅さんに手を差し出す充さん、沙羅さんは怒っているけど迎えに来てくれた事が嬉しくて仕方ないとでも言う様にその手を掴む。
帰っていく2人を先輩とその場で見送って、先輩は私の腕から手を離す。
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