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確固たる瞳は、きっと僕が何を言っても聞かないだろう。一つの溜息を零して、ぼんやりと“倉田芽依”の姿を視線で追う。
死が近しい人の周りには、薄ぼんやりとした灰がかった影が見える。これが濃くなるに連れ、身体を侵食しきった後に、その人の寿命が潰えることとなる。
「…人間に恋心を抱くなんて、センリは案外馬鹿だよね」
「これは恋じゃなくて愛なんですぅ〜」
「何が違うんだか」
「ミコトちゃんは知らなくていいよーん。オレはオレで勝手にやりたいようにするし」
馬鹿だよ、本当に。叶うはずのない恋心を抱いているセンリも、---僕も。救いようがない阿保だ。いつかきっと苦しむことがわかっていて、やめられないのだから。
「じゃ、オレは芽依ちん見守りにいくからまたねん」
「それ、死神だからバレないだけで普通にストーカー行為だから」
死神界から飛び降りて、人間界に移動したセンリの姿を無意識に追ってしまう。きっとセンリよりも僕の方が何倍も、---馬鹿なのかもしれない。
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