死神は祈る

4/4
前へ
/5ページ
次へ
確固たる瞳は、きっと僕が何を言っても聞かないだろう。一つの溜息を零して、ぼんやりと“倉田芽依”の姿を視線で追う。 死が近しい人の周りには、薄ぼんやりとした灰がかった影が見える。これが濃くなるに連れ、身体を侵食しきった後に、その人の寿命が潰えることとなる。 「…人間に恋心を抱くなんて、センリは案外馬鹿だよね」 「これは恋じゃなくて愛なんですぅ〜」 「何が違うんだか」 「ミコトちゃんは知らなくていいよーん。オレはオレで勝手にやりたいようにするし」 馬鹿だよ、本当に。叶うはずのない恋心を抱いているセンリも、---僕も。救いようがない阿保だ。いつかきっと苦しむことがわかっていて、やめられないのだから。 「じゃ、オレは芽依ちん見守りにいくからまたねん」 「それ、死神だからバレないだけで普通にストーカー行為だから」 死神界から飛び降りて、人間界に移動したセンリの姿を無意識に追ってしまう。きっとセンリよりも僕の方が何倍も、---馬鹿なのかもしれない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加