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何時間寝たのかな。気がつくと外が夕焼けに染まっていた。お腹が窮屈だと思ったら大吉が潜り込んでいる。
お散歩にでも行くかな。ぼくはそう決めると見えない羽を広げて窓の隙間から空へ舞い上がった。なにしろ天使猫だからね。何処へでも自由自在に行くことが出来るのさ。
お気に入りの場所は、マンションからさほど遠くない池がある公園の一番高い木の一番高いところなんだ。ぼくはここで鳩やカラスさんたちと世間話をするのさ。
バサバサ
さっそく鳩さん達がやって来た。
「やあ、ダイアン、お誕生日おめでとう!」
カアカア
こんどはカラスさん達だ。
「ダイアン、お誕生日おめでとう」
「みんなありがとう!」
ぼくは仲間に恵まれている。
ほんとに幸せだなぁ。
今年は暑い。まだ五月だというのにまるで夏のようだ。毛皮族のぼくらにはこの暑さは特に辛く感じる。真夏にもなれば最悪だ。お散歩にでも出かけようものならば、まるで歩く湯たんぽ状態といったところだ。その点、お家にいればあいちゃんがエアコンをつけてくれるから快適そのもの。それでも押し入れで寝転がっていることが多いのだが。
遊び盛りの大吉は部屋中を飛び回っている。
「大吉! 少しは休憩するんだよ」
ぼくの声は届かなかった。あいちゃんもあきれて大吉を見守っている。
大吉はソファーからソファーをムササビのように飛び回ったかと思えば、爪を立ててクッションをボロボロにした。もうやばい、あいちゃんに叱られるぞ。そう思ったときだった。
「大吉ちゃん」
あいちゃんが羽根を持ってきて、大吉の気を引くように激しく振った。
あいちゃん優しい。
「ニャーニャー」
大吉は新しいオモチャに大喜び。脇目も振らずその羽根に飛びかかる。
遠巻きに見ていたぼくの本能も疼く。ぼくも遊びたいなぁ……。
そうこうしているうちに、遊び疲れた大吉は、畳の部屋で真横に倒れて寝てしまった。「興奮しすぎだにゃ」
ぼくは大吉の側に来て箱座りして見守った。
あいちゃんはぼくと大吉を優しく撫でてくれた。こうして瞬く間に時間が過ぎてゆく。
グゥゥ、お腹が鳴る。
もうじき晩ご飯の時間だ。
鰹缶に鰹節、あいちゃんの、缶詰をコンと鳴らす音やパカッと蓋を開ける音を聞くだけで涎が出そうになる。
気がつくと大吉がいない。
「ニャーニャー」
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