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鰹缶の音で目を覚ましたのだ。大吉はすでにキッチンにいてあいちゃんの足元で目の色を変えてアピールしている。
大人なぼくはグッと堪えて、あいちゃんが食事の用意をしてくれるのを待つ。
ぼくと大吉のお皿に鰹缶が盛り付けられる。たまらなく良い匂いがお鼻と胃袋をくすぐる。もうたまんない。
「ニャーニャー」
堪えきれなくなったぼくは、大吉のようにあいちゃんの足元に駆け寄った。
「ニャーニャー」
「ニャーニャー」
ぼくと大吉の大合唱だ。
「ふたりとも慌てないで、今あげるから」
あいちゃんがぼくと大吉の前にそれぞれのお皿をおいた。もちろん鰹缶山盛りだ。
ぼくらは夕食を無我夢中で食べた。
「あれ、カリカリが見えてきた」
しばらく食べていると底の方から、ドライフードが見えてきた。
「カリッカリッカリ」
ぼくは鰹缶の出汁が染みたカリカリを迷わず食べ続ける。
栄養の偏りがないように、あいちゃんが鰹缶にドライフードをミックスしてくれるんだ。
大吉も残さず食べてしまった。
ぼくと大吉はお水を飲んで喉を潤すと、キャットタワーの一番高いところに登って横たわった。
「ぽかぽかで、お腹いっぱいで、満足満足」
すぐに眠気が差す。今日もご馳走様そしてお休みなさい。
近頃の大吉はぼくのまねばかりする。何処へ行くにも着いてくるし、ぼくが水を飲めば水を飲む。公園の木に登れば登ってくる。ほんとに可愛い奴だ。
さあ、今日はなにをして遊ぼうかな。
「今日はちょっと冒険しようか」
大吉に提案すると「わぁ、楽しそうだね」大吉がこたえる。
ぼくらは二人揃って家を出た。
お外の空気は美味しい。緑の芝生はどこまでも広がっていて、バッタさんやチョウチョさんやトンボさんが飛んでいる。
ぼくはトンボさんを見ていたら無性に追いかけたくなってきた。
「大吉、行くぞ!」
ぼくは後ろ足に力をこめて、思いっきり跳ねた。大吉も跳ねる。ぼくは前足を伸ばしてトンボさんを追いかける。大吉はぼくより激しく跳ね回る。
ふわふわ飛び回りトンボさんは余裕をみせる。
「やーい、やーい、君たちにぼくは捕まらないよ」
トンボさんが舌を見せてぼくらを挑発してきた。
目玉をまん丸にして飛び回る大吉。ぼくもハンターの本能がうずき出す。
「大吉、こういうときは作戦があるんだ」
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