8人が本棚に入れています
本棚に追加
あっという間に鰹節はお皿から綺麗さっぱり消え去った。
ごちそうさま!
ぼくと大吉は満足してヒゲや口元をペロペロなめてお掃除した。
お腹いっぱいになったら、大吉は軽い運動がしたくなったのか、ぼくにじゃれてくる。ようし追いかけっこだ。ぼくは素早くキャットタワーに登った。大吉も猛スピードで追いかけてくる。大吉が一番高いところに来たところで、ぼくはピヨンとソファーに飛び移った。大吉もぼくを真似てソファーに跳んだ。
あいちゃんは呆れ顔でそんなぼくらを見守っている。
もう少ししたらあいちゃんのおかあさんが帰ってくる。晩ご飯までにせっせと運動しておかなくちゃ。
あいちゃんはリビングでテレビを観ている。大好きな『腕白猫物語』だ。大きな画面に猫が沢山出てくる。寝転がったり、追いかけっこしたり、花の匂いをかいだりと、みんな思い思いに過ごしている。ぼくも大吉もこの番組がはじまると、テレビの前にくぎ付けだ。だって面白いんだもん。問題なのは時々大吉がテレビの猫と遊びたがって、テレビに突進してしまうことだ。
「大吉ちゃん、だめよ」
あわててあいちゃんが大吉を抱きかかえて大人しくさせる。さすがにぼくは大人だからテレビに突進しないけど、大吉の気持ちはよく分かる。テレビを観ていると友だちと遊んでいるような気分になるんだ。だからぼくの本能をくすぐる。まったく罪作りな番組だよね。ほら、また大吉がテレビ画面に突進した。
「ただいまぁ」
あいちゃんのおかあさんが帰ってきた。ぼくと大吉は玄関に走る。あいちゃんも慌てて出てくる。
「今日の晩ご飯はカレーにするから」
「やった! カレーだ」
あいちゃんはカレーライスが大好物。
ぼくたちはなにかなぁ。
「ダイアンと大吉ちゃんはいつもの鰹缶の山盛りよ」
そう言いながらキッチンに向かう。
ぼくと大吉は競って晩ご飯のコールする。
「二人とも食欲旺盛ね」
あいちゃんのお母さんはにっこり微笑む。
「あたしがあげるわ」
あいちゃんが鰹缶を二人分持ってきた。
ぼくらは大合唱する。
シャリッと音がして鰹缶の蓋が開く。たまらなく良い匂いがする。
それからぼくらがどれだけ天国だったかはもう言わなくても分かるよね。
お腹いっぱいになったぼくはソファーで丸くなった。大吉も側でごろりと寝転んだ。
あいちゃんはキッチンでお母さんとカレー作りをしている。
最初のコメントを投稿しよう!