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天使殺します✌︎
天使なんて居て溜まるか馬鹿が。
派遣社員として介護施設で働いていたが、精神的苦痛が限界まで来て辞めた。それから1ヶ月半、頭のネジが外れて金を使いに使った。服、靴、ピアス、音楽、女、薬ーーー請求に追われている。もう23歳なのだから親にも頼れない。
「なあ。どうしたらいい?俺はどうしたらいい?なあ?こんな世界……!」
洗面所の鏡に向かって尋ねる。反射する右の腕元はカッターで切った傷だらけで、頬が痩せこけている。ずっとまともな食事をとっていない。薬の方が食っている。精神安定剤から幻覚剤、覚醒作用のある物まで、俺は穴の空いた心を埋めるかのように喰らう。
「お前に言ってんだよ。この精神障害者が幸せになる方法を答えろ。何が足りない?愛か?金か?名誉か?」
……すまない、こんな問いは誰にも解けないさ。ところでこれはノンフィクションのエッセイか?それとも物語・フィクションか?
事実を書いていようが、直接関わっている人間にしか書いたそれがノンフィクションだとは気づけない。それにフィクションには必ず『現実』が反映されている。この2つの境目など不明瞭でくだらない。
「すみません、話が逸れましたね。障害者なもんで……ハハ」
「1人で何を話しているの?お兄さん」
お、皆さん!良いタイミングで天使が現れました!金髪に白いドレスの様な透き通った服。歳は10歳くらいだろうか?可愛らしい女の子だ。
「いや、俺はどうしたら幸せになれるかな、と」
「貴方が求める物はなあに?どんな希望も叶えるよ?」
マジ?アッツ……!こんなことあります?……あれ、でも……
「幸福を求めているけれど、どうしたらなれるのか分からないから……分からない……」
「えぇ〜?幸福その物は人によるからなぁ……うーん……」
なんでも叶えられる天使を困らせてしまった。天使が来てこの展開になったの俺くらいだろ。
「なんで、なんで俺は……足りない物が分からない……!?幸せな人間が憎い!どいつもこいつも普通をいとも簡単にこなして!違う!!!こんな大人になんてなりたくなかった!!!俺は!!!ただ……美しいものを創りたい……」
「あっ、創作の才能が欲しいの?それならあげられるよ!うん、あたし、できる!」
「ーーーーーーーーー」
言葉を失った。コイツは何も分かってない。こんな形で与えられた才能にどんな価値があるんだ?そんなの、俺の芸術で無くなる。創作に対する最大の冒涜だ。冒涜だ。冒涜だ。冒涜だ。冒涜だ。冒涜だ!冒涜だ!冒涜だ!冒涜だ!!!
「いやいいわ。欲しいもの思いついたわちょい待ち」
部屋の引き出しから注射器を取る。その傍にある結晶も。慣れた手つきで注射の準備を終わらせて、右腕を捲る。
「ハハハ!やっぱ覚せい剤だよなあ!?」
普段の数倍の量を打ち込む。ああーーーこれだーーー俺はもう、もう、いいんだ。幸せとか、価値とか、正義とか、思い出とか、全部全部、要らない。
「お前を殺す権利をくれよ」
手持ち無沙汰に洗面所で待っていた天使にズッ、と近づき言う。
「ーーーえ?……えっ?あなたの願いはそれなの?……どうして?願いは幾らでもーーー」
「黙れッ!!!殺すッ!!!」
天使の顔をこれまでの人生全ての力というくらいに込めて、殴った。天使は壁に強くぶつかって、床に倒れ込み、その後困惑しているような顔をしていた。左の目元が大きく腫れて血が垂れている。
「テメェが俺の願いを叶えられる訳ねえだろうが!!!」
追い打ちをかけるように横腹を蹴り飛ばす。
「カハッ!!!」
綺麗な聲で天使が鳴く。
「片親で!!!大学の卒業すら薬に頼りまくって!!!苦労して卒業して!!!人に迷惑かけまくって!!!金も才能も何も!!!何も無い俺の気持ちが!!!お前に!!!分かるか!?!?」
叫びながら天使の腹を何回も踏みつけた。吐血して俺の身体にまでかかる。興奮する香りだ。
ああ、なんて美しくて、心地良いーーー
「いたいよ……やめて……いたい、いたい……」
「なあ、これ、要らないだろ」
泣き喚く彼女に馬乗りになって、両羽の付け根を掴む。
「やめてッ!!!それはッ!!!それだけはッ!!!」
急に天使が驚くくらい精気を取り戻して足をバタバタとさせる。
「どんな願いも叶えるんだろう?俺は今凄い幸せ……いくよーーーせーのーーー」
ビリイイイイィイィイィィィイイィィィィィィイィィィィイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
気持ちよくもげきれた。これでもかと血がシャワーのように溢れて洗面所を彩る。
「ああああああああぁぁぁあああああああああああああああああああぁああ!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああぁぁぁぁあぁああぁああ!!!!!!!!」
「綺麗な聲だ……」
天使は白目を向いて痙攣し続ける。その様子が余りに妖艶で、俺はパンツの中で射精した。
何分経っただろうか。天使の動きが止まった。
「あ、死んじゃった」
その悲しさを感じ取る間もなく、何かが体内に侵入した。
「あれーーー」
熱さを感じた自分の心臓の方を見ると、何者かの腕が貫通していた。
「ああ、そっか」
俺は悟った。俺の心臓を手の内にしていた者は容赦無く、それを握り潰した。
「地獄だろう?俺の土俵にやっと……」
天使は俺の願いを叶えてくれた。ありがとう、ありがとう。俺が幸福になるには
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