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1 教会の二人は、祈りを聞いている
寂れた教会の天使像の前で膝をつき、熱心に祈っているのは、二十歳前後と思しき女性だった。
すでに、かれこれ二十分ほど祈りを捧げている。
祈りを終えた女性は、顔を上げると立ち上がり、膝をついていた辺りのスカートをパンパンとはたいた。
そして数分もの間、頭上ほどにある古びた天使像をじっと見つめた。
女性が教会を出た一時間後。
ロングコートに長身の男性が教会から出て来た。
後から出て来た少年が男性に声をかける。
「セラフィ、どこにお出かけするの?」
セラフィと呼ばれた青年は、振り返って少年を確認すると、尊大に答えた。
「ちょっと、な」
少年はセラフィの答え方には慣れている、と言うかのように肩を竦めた。
「あの女性、また来てたね。声を出さずに祈っているから、願い事は神しか分からないけど。あんなに熱心に祈っているのだもの。なんとかしてあげたくない?」
六歳くらいの少年は腕組みして、難しい顔をしている。
難しい顔をしても、金髪の巻き毛が可愛らしい。
そんな少年を眺めて、セラフィは少しだけ吐息をついた。
「全員の願いを叶えてやったら、キリがないんじゃないか? そもそも、奇跡を起こすのは天使じゃなくて、神だろ? 天使に祈ってもなぁ……。あぁ、アルン、無用な手出しをするんじゃないぞ。」
アルンと呼ばれた金髪巻き毛の少年は、少しだけ眉を上げてセラフィを見上げた。
「留守番してろ。おとなしく待っていられるなら、帰りにパイヤードの美味いフルーツキャンディを土産に買ってくる」
セラフィの言葉にアルンは、意味ありげな表情をしてから笑顔を見せる。
「うん、きっとだよ」
セラフィに答えたアルンは、年相応の幼い少年の物だった。
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