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9 大天使総合評価会議
「これより大天使総合評価会議を始めます」
厳かな司会により、年末の天界における大天使総合評価会議が開始された。
天界総合評価会議は一年に一回開催され、天使たちの仕事ぶりを評価する会議にあたる。
天使たちは、各国毎に第一区〜第十区まで二人一組で担当地区の統括をする。
この会議における評価が低ければ、天使階級の降格も免れない。
第三区として、会議に参加しているアルンとセラフィは退屈そうにしている。
二人とも自分の進退にさほど興味はないらしい。
「まず、第一区のミケとリエル、助けた人間の数は断トツ多いが、助ける規準が一貫しない。助けたせいで怠惰になっている者もおり、本当に人間の為になっているのか、甚だ疑問が残る」
司会の評価に第一区担当天使たちが項垂れた。
「次に第二区、ガブとウリ、二人は助けなさ過ぎだ。人間の自立を促す事と、無視する事は性質が異なる。人間への助けとは何か、もう一度再考せよ」
第二区担当者たちは、少しだけ不貞腐れている。
何やら反論もしたそうだが、本会議での反論は認められていない。
「第三区、アルンとセラフィ。今期、本会議における最高得点。信心深い者を助けるという本質を掴んでいた。また、助けた者が驕ることなく、富を自分の物だけにせずに教会へ寄付している所も、助けるに値する者だったと言える。」
アルンとセラフィの評価に会場がどよめいた。
続けて司会が第四区から第十区までの評価を読み上げたが、第三区で読み上げたとおり、今期の最高得点はアルンとセラフィだった。
「昇格、何で断ったの?」
会議の帰り道、アルンがセラフィに尋ねた。
少し考えてから、セラフィが答える。
「受けておくべきだったかもな。誰かがイタズラした上に、階級が上と言い張ってこっちに手出しができないようにするんだからさ」
セラフィの回答を受けて、アルンは楽しげな笑顔を浮かべた。
「じゃあ、ボクたちはボクたちの仕事をしに、教会へ帰ろう」
昇格して天使の管理側になったらこのお仕事は出来なくなるからねと言外に匂わせて、二人は楽しげに自分たちの教会へ帰って行くのだった。
〈了〉
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