7 天使の守護

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7 天使の守護

 アデルの繊細な修復により、天使像は元の美しい姿を取り戻すことができた。  使われていた顔料が通常のものではなく、水彩で落ちやすかったのも修復速度が速かった一因だったようだ。  教会のいたずらされた天使像を、元の美しい天使像に戻したのがアデルだと街中に知れ渡ると、アデルの元に絵画の依頼が立て続けに舞い込んできた。  アデルから返済金を受け取ったアントンは目を丸くした。 「アデル、おまえまさか、手を付けちゃいけない仕事に手を出したんじゃないだろうな」  心配するアントンに、アデルは自分の身に起きた事を語った。  アントンはアデルの話しを聞き終わると、腕組みをして、ふぅむと頷く。 「それは、不思議な事じゃな。アデルが信心深いから教会の二大守護天使が現れてくれたのかも知らんのぅ」  あの日以来、アデルはアルンにも長身の男にも会っていなかった。  二人が天使だったのかは分からないけれど、自分の暮らし向きが変わったのは紛れもなくアルンと長身の男のおかげだった。  アデルは修復中も、修復後も天使像に祈り、感謝を伝えた。  長身の男からの給金により、母にちゃんとした治療を受けさせる事ができた。  身の丈にあった生活費以外全ての給金を、アデルは教会に寄付していた。  すると不思議なことに、今度はアデルの絵の才能に惚れこんだパトロンがつくようになった。  数名のパトロンは、代わる代わるアデルに肖像画の依頼やアデルが描いた絵画を高額で買い取り、それがまた上流階級者のサロンなどに飾られて話題を呼んだ。  人々はアデルの生い立ちを聞き、その後の成功を耳にし、彼女には守護天使がついているようだと噂しあったのだった。
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