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8 アルンとセラフィその後を語る
「ちょっとやり過ぎたんじゃないか?」
不満気なセラフィの言葉に、アルンは笑った。
「いいんじゃない? 有名になっても、大金を手にしても彼女の本質は変わらないし」
「せっかく俺が稼いできた金を、惜しげもなく教会に寄付してきやがった。何のためにこっちが稼いだと思ってるんだ」
端正な顔でムスっとしているセラフィに、アルンが無邪気に尋ねた。
「ところで。気になってたんだけど。セラフィは一体、何で稼いで来たの?」
「歌劇。天使役」
セラフィの答えにアルンが笑い出した。
「そりゃあ、ピッタリだ」
「お前が顔にイタズラ書きしなきゃな」
「あれは面白かったなぁ。またやろう!」
楽しげに言うアルンに、慌てるセラフィ。
「やめろ! 大変だったんだぞ。主催者が仮面を気に入ってくれたから良かったが……。それにしても、だ。何でおまえの像はないんだ?」
「ソレ、言わせたいの? 分かりきっていることなのに。ボクが君より階級が上だからさ。人前に姿を現すのは、格下の役目なんだよ、セラフィ」
幼い少年にしか見えないアルンの言葉に、セラフィは黙って唇を噛んだ。
「あれからも毎日来てくれているね、アデル」
祈りを終えて教会から出ていくアデルを、違う部屋から見送りながらアルンが呟く。
「会わなくていいのか? おまえのお気に入りだったろ?」
「神秘的な事象は一回限りが有効だよね。何度も起きたら奇跡じゃ無くなっちゃうし……」
少しだけ寂しそうに答えるアルンの頭をクシャクシャと撫でて、セラフィが優しく微笑んだ。
「俺たちは神の代弁者であり、守護だから。神が気に入るような次の人間を助けに行くかね」
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