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『お前のせいだ』
そう言われた気がして、僕はハッと目を覚ました。
辺りに人は居ない。
自分がどのような夢を見ていたのかは思い出せなかったが、どうせ、たいした夢ではないだろうと思い、先程の言葉は気にせず、朝の支度をしていた。
奏音に送ったLINEは既読になっていなかった。
まだ寝ているのだろう、と思い、僕はゆっくりと、支度を進める。
10時58分。
支度を終わらせ、LINEを確認するがまだ既読になっていなかった。
今日は日曜日。
僕は早く奏音と会いたかったので、奏音を起こすためにLINEで電話をかけた。
愉快な音楽が1分ほど流れ、通話が切れる。
LINEには、『不在着信』の文字が、なんだか生々しく描写されていた。
おかしいな。
いつもなら電話をかければ起きるのに。
そう思い、もう一度電話をかける。
何度も何度も、電話をかけたが、応答が無い。
きっと、充電が切れてしまっているんだ。
そう思い、自分を無理やり納得させる。
だけど、数時間経っても、昼をすぎても、夕日が昇ってきても、折り返し電話は来なかった。
LINEの既読すら付いていなかった。
僕はやっと、自体の深刻さに気づく。
昨日の奏音の言葉を思い出す。
夢で聞こえた気がした、あの言葉を思い出す。
最悪の可能性を想像する。
僕は、家を飛び出した。
雨が降っていた。
傘を取らなければと思い、情けなくもう一度家へ入り、傘を取った。
透明のビニール傘を広げ、僕は走る。
奏音の家へ走る。
普段運動不足の僕は、直ぐに体力が切れてしまい、膝に手を着いてばかりだった。
10分ほどで奏音の家へ着いた。
ごく普通の一軒家。
インターホンを鳴らす。
『はーい』
と、女性の声が聞こえてきた。
奏音のお母さんだ。
僕はその声に対し、
『奏音さん居ますか?』
と敬意を込めて返事をした。
奏音のお母さんは、
『奏音は昨日から友達の家に泊まっているわよ』
と伝えてくれる。
『本当ですか?』
『えぇ。聴かされてないの?』
『あ、はい。連絡もつかなくて』
『おかしいわね。私からも連絡してみるわ』
『ありがとうございます』
そう言うと、インターホンの通話機能は停止した。
最悪の可能性が脳裏に何度も、何度も過る。
『僕のせいだ』
そういい、僕は開いた状態の傘を投げる。
傘は、風に流され少し遠くまで飛び、電柱にぶつかり、道沿いの溝に落ちてしまった。
そのまま呆気なく右方向へ水と共に流される。
雨に打たれ、絶望する。
天気は、まるで、僕の心を表しているような気がした。
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