1怖:ぼくはここにいるよ

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1怖:ぼくはここにいるよ

   いつもの放課後の帰り道。 僕は友達と隠れんぼをする事にした。 人数は五人で佑樹くん、健太くん、里奈ちゃん、龍斗くん、そして、僕。 近くの公園は広く隠れるのに最適だという事で公園で隠れんぼをする事にした。 「じゃんけんぽん!」 公園の中心でジャンケンをして鬼を決める。 今回の鬼は健太くんのようだ。 鬼が分かったと同時に四人は隠れる場所を探す。 佑樹くんは近くの木の後ろ。 里奈ちゃんはベンチの後ろに。 龍斗くんは滑り台の陰に。 そして僕は、公衆トイレの奥の個室に。 「もういーかい?」 「まーだだよー!」 「もういーかい?」 「もういーよ!」 始まりの合図を告げる掛け声に僕はワクワクとドキドキを覚えた。 「見ーつけた!」 という元気な声が四回続き、次は僕だとドキドキに体を委ねているが、様子が変だ。 誰も見つけてくれない。誰も声を聞かせてくれない。段々と僕は恐怖を覚えて、トイレから出ようと鍵を開けてみるが、全く開かない。 「なんで、なんで開かないの…!」 涙を瞼に浮かばせ、必死に鍵を開けようとする。が、どんなに粘っても、開くことも、助けも来ず、僕は恐怖に体を震わせていた。 「もういーかい?」 それから何分経ったのか分からない状況の中、健太くんの掛け声が聞こえた。 僕は助けて貰えると思い、必死に叫ぶ。 「僕はここにいるよ!」 でも、健太くんは反応してくれない。 ずっと「もういーかい?」と掛け声を上げている。 「僕はここにいるよ!僕は、ここにいるよ!」 何度も叫んでみるが、ずっと続くこの声に不気味さを覚える。 そして、健太くんの声はついにトイレの室内に響き渡る。 「もういーかい……?」 声は段々と不気味になっていき、これは健太くんじゃない事は分かっていた。けど、口が勝手に動くんだ。 「ぼくはここにいるよ」 その言葉を放った瞬間、トイレの鍵が開き、誰か別の人が助けにきてくれたのかと目を輝かせて、扉を開けた。 だが、そこにいたのは、健太くんでも、信頼出来る大人でもなかった。 「やっと、みーつけた……」 ……この声の正体は何だったのか、僕がどうなったのか、それは誰も分からない。
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