葛籠入り

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色白の肌、唇には真っ赤な紅を引き、白絹の衣を身に纏わせる。 閉じ切らない瞳は光射す事無く虚ろで、開けた口に舌をねじ込み口吸をする。 絡める様に手を握り締め、冷たい身体同士を重ねれば、私の心はひどく満たされた。 彼は元来、根明で優しい童子だった。 いつも私を気にかけ、この座敷牢までやって来ては家の者や従者すら忌み嫌う私にものともせず接した。 それが元で折檻されようとも、彼は凝りずに何度も顔を出し続けた。 いつまでも止まぬ咳と、血反吐に苦しむ毎日。 不治の病だった私は医者にも匙を投げられ、故に誰も私に近づく者などいなかった。 彼が奉公人として来るまでずっと、私は座敷牢【ここ】で孤独だった。
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