葛籠入り

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着物が開けた胸に舌を這わせて、流れていた血を舐め取る。 ビクリと揺れる身体に思わず笑みが零れ出た。 彼の胸の真ん中には、深々と突き刺さる小刀。 髪を削ぐと偽り、彼に持ち込ませた其れに手を掛け引き抜くと、彼は掠れた声を吐き、ドロドロと血を垂れ流す。 ぱっくり開いたその傷口。 舌を這わせて飲み干す様に血を啜れば、彼は呻き声を上げた。 「ぁ……う゛ぅ……ッッ」 今までに吐き出した己の血を取り戻す様に彼の血を吸い尽くす。 ジュルリ、ジュルリ、ジュルジュル。 けして飲める代物では無い。 けれども、彼の身体から流れ出ているというだけでいくらでも飲み干せる気がした。 ハァハァと、震えた息を荒げる彼の顔を覗き、口周りを血で濡らしながらもその唇に口吸をする。 ゲホゴホと彼が咳込むのも気にせず、頬を擦り合わせて愛を囁く。 「ずっと求めてやまなかった……私の愛しい童子」 はにかむ笑顔が眩しかった。 飛び跳ねる姿が愛らしかった。 手の届かぬ格子越しが歯痒かった。 私を外へ連れ出そうとする意志の揺るぎ無さに目眩がした。
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