雨と直帰

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雨と直帰

もしあの日、出先で引き止められていなければ。 もしあの日、定時あがりの予定じゃなかったら。 もしあの日……あの時間に雨が降らなかったら。 私は彼に出逢わなかった。 だって引き止められなかったら、きっと逆の方向のバスに乗って親友の産まれたばかりの赤ちゃんに会いに行っていたから。 この時間じゃちょっと遅いと諦めて、駅に足を向けた途端に降り出した雨も、いつもなら周りなんて見ないで走って駅に向かってたし……濡れる事を選んでた。 だから彼に出会えたのはその日のいつもと少しだけ違う何かが、私を引き寄せていたんだと思う。 いつもなら絶対に入らない店で、彼と出会うあの瞬間に全てが繋がっていたんだと思う。
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