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鞄の中から大切にしている一枚のカードを取り出して、まどかちゃんに見せてあげる。
「これは?」
今の子は、見たことがないかもしれない。
私の通っていた小学校でも、高学年になる頃に貸出カードは廃止されてバーコード管理になったんだから。
「これはね、貸出カードっていうの。昔はね一冊一冊に、この貸出カードが用意されていて、本を借りる時に名前を書いたんだよ」
「本当だ。おねえさんの名前も書いてある」
まどかちゃんの言ったとおり、貸出カードには『こまき まり』と私の名前が書いてある。
「私が二年生の時、いつものように図書室に行ったら男の子がいたの。普段は絶対に図書室に来ない、活発で明るい男の子」
今でも思い出せる。図書室の扉を開けた時に、彼の姿を見て思わず何度も確認した。なんでいるの? 教室間違えた?
そんな自分が滑稽で思わず笑ってしまう。
「足を怪我してね、動けないから図書室にいたんだって。ちょうどその時期、学校はドッヂボール週間で休み時間はみんな外にいたの。彼は怪我で参加できなくて、私も喘息で参加できなかったから、二人で一週間、図書室で過ごしたんだ」
あの時のことは全部覚えてる。
たった一週間。それでもきっと一生忘れない一週間だった。
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