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私の話を聞いていたまどかちゃんが、席を立って本棚へと向かっていき、迷うことなく一冊の本を持って戻ってきた。
それは水色の表紙に人魚の男の子と海の生き物が描かれていた。
「まどかちゃんの大好きな本、かな?」
「うん……だけど、いつもここにあるの。だれもこの本、読まないんだ」
「そっか。まどかちゃんは、読んで欲しいんだね?」
自分が大好きな本を、誰かと共有できる。それがすごく楽しいことだって私も知っている。
だけど見るからに内気なまどかちゃんが、積極的に動けないだろうというのも、よくわかる。どうしたらいいかな……。
本というのは押しつけて読むものじゃない。課題図書なんていい例で、読みたくない子たちは、あらすじだけで読んだと言ってみせたり、途中で読むのを諦めたりしちゃうんだから。
この本が楽しいということを、どうやったら伝えられるのか。
全員じゃなくていい。誰か一人にでもさされば……。
掲示物には、今日の読み聞かせや新しい本が入ったというお知らせが貼ってあった。
「そうだ!」
いきなり隣で大声を出したから、まどかちゃんがビックリしたけれど、私は掲示物が貼られている壁へと駆けだした。
一通り掲示物を確認するけれど、お目当てのものは貼られていなかった。
この学校にはないのか。
でも、ないなら、作ってしまえばいい。
「ねぇ、まどかちゃん。『図書室だより』作ろうか」
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