1章:全てのはじまり

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結婚をする時、海里さんは私に伝えた。 『結婚したら仕事をやめて家庭を支えてほしい』 『えっ』 私は仕事を続ける気でいたので、海里さんの言葉には驚いた。 『夢なんだ。父親が働いて、母親が父親を支えて……子どもの頃からそうやって両親の背中見て生きてきたから、あずさにもそうして欲しいなって思ってる。きっとそっちの方が俺があずさを支えるだって、仕事も頑張れそうな気がするし……』 『うーん……』 確かに今のところ二人で生活していくには、海里さんの稼ぎだけで問題はない。 でも……。 『仕事は私もやりがい持ってやってたから……』 『やりがいながら仕事以外にも感じることが出来るよ!今みたいに取引先の会社の情報まとめてくれたりしたら俺もあずさに助けられてるって思うしさ……これから俺の昇進もかかった大事な時期になってくるし、あずさに支えてほしいんだ』 海里さんの熱心な説得に私はしぶしぶ仕事をやめることにした。 『分かった』 俺が支えるって言ってくれてるのよ。 今時そんなこと言ってくれる人はめったにいない。 いいじゃない、それで……。 でもそれが全てのはじまりだった。
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