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都市伝説の少年
僕は死神から渡されたノートに目を通す。
『えーと次の仕事は、東京都世田谷区に住む山之内絹江さん87歳』
僕には名前はない。と言うか覚えていない。
死神の話しだと、僕は家族とのドライブ中に対向車線をはみ出した飲酒運転の車に巻き込まれて死んだらしい。
本来『事故で僕だけ生き残り子供のいない親戚に養子として引き取られ平穏な人生を過ごす』予定だった。
それなのに、新米死神のミスで一時死んだことになり、ミスが発覚後に元の体に戻ろうとしたが、期限を過ぎこの世に戻れない事に。
発覚が遅くなったのは新米死神がミスを隠蔽しようとしたからで、その死神は罰として消滅させられた。
だけど、僕は『あの世の住人リスト』には名前がないからあの世にもいけない。
宙ぶらりんな存在になってしまった。
そんなある日僕の前に、ベテラン死神が現れてこう告げた。
『誕生を司る神と掛け合い話をつけた』と。 その結果僕が亡くなる予定だった60年後に、僕を生まれ変わらせるのが決まった。
本来あの世のリストにない人間を、生まれ変わらせる事は特別らしい。『ただし』条件がひとつ。
それは……。
『いまわの言葉の伝達人』になる事。
僕には実体がない。
だけど人生の終焉を迎える人と、その人が最後の言葉を伝えたい相手には僕が見える。
だから僕は今日も言葉を受け取りに行く。
言葉を誰かに届けるために。
そんな僕はいつの間にか、都市伝説『いまわの言葉の届け人』と呼ばれるようになった。
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