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ユサユサと身体を揺さぶられる感覚がして徐に目を開ける。アインスはいつの間にか気を失っていたのかと気づくと同時に、違和感を覚えた。此処には彼女しかいないはずなのに、揺さぶっていた者は誰かと。
「姉さん、やっと起きてくれましたか」
耳慣れない呼び名に慌てて身体を起こすと、眼前に広がる光景に目を見開いた。褐色の肌に長い黒髪、全体的に暗い色の容姿とは裏腹に白い衣装を身に纏う青年。そして、彼の背後には色とりどりの花たち。
真っ黒な世界が一気に華やかな世界へと変貌を遂げていたのだ。
「これは、一体」
「嗚呼、此処に載っていたものを再現してみました」
青年の手にあるのはネロが持っていた本だ。
「気に入ってくれましたか」
「ええ、花は好きよ」
アインスの満面の笑みを太陽が明るく照らす。立ち上がってゆっくりと一回りすれば、視界に色彩豊かな花たちが映った。
「それで貴方の名前は」
「えっ、嗚呼、僕はツヴァイです。姉さんを支えるために新しく生まれました」
新しいお人形。何故生まれたのかなど問う必要もない。アインスは一人ぼっちの寂しさを覚えてしまった。だから、一人ぼっちにならないように新たな人形が生まれた。
「私はアインスよ。これからよろしくね」
白い手を黒い手が交わる。大丈夫、二人なら寂しくないからきっと上手くやっていけるはずだ。
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