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あの少年はなんだったのだ。なぜ飲み込んだのかとは、いったい何を指していた。そもそも、あんな少年が実在したのかと不安になる。ひょっとして白昼夢でも見ていたのではあるまいか。俺だけに見えるスーパーの妖精的なそういう物ではなかったのか。
気もそぞろに店内を見回ってみると、その妖精は店内に出店しているパン屋さんと話していた。どうやら俺だけに見えるわけではなかったようだと胸をなでおろす。
パン屋さんは、近所に住む佐藤さんだ。俺とも顔見知りなので目の合ったタイミングで会釈をかわす。その様子をみたのだろうか。
目ざとく俺をみつけた少年は、
「きみ、きみ」
と俺を呼ぶ。
どうにもその、きみ呼びには慣れない。苦く笑い、口を開こうとしたらまた心を読まれる。
「ああ、そうか。名乗ろうとしているね。きみはその名をボクに呼んで欲しいと言うんだね。でも名乗らなくても結構なんだ。ボクはひとの名前をおぼえる気はないよ」
不思議なことを言う。キョトンとして、思わず尋ねた。
「おお、そうなのか。どうしてだ」
ふふ、と不敵に笑い、
「知らないのかい」
と喜びの色をみせる。
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