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ぼうやは急旋回し、器用に缶詰めを避けていく。いい反射神経をしていた。これは俺が手を出さなくとも当たらなかったような気がしなくもない。ピラミッドの山は机ごと倒れ、中々派手な音が鳴ってしまう。サバ缶はコロコロと転がり、中にはへこんでしまったものもいくつかあった。
周りをぐるりと見回し、
「やっちまったな」
と心の中でつぶやいた。
ぼうやの姿はどこにもなかった。どうやら怪我はしなかったようだなと安堵する。周りにいた客にペコリと頭を下げて缶詰めを集めていく。いちばん遠くまで転がった缶詰めを拾いに行ったら、目の前でヒョイと拾われた。
「ありがとう」
顔をあげたつぎの瞬間、俺の目はとうに奪われていた。
その子が、目を見張るような美少年だったからではない。軽くウェーブしている髪が、キラキラと輝くブロンドヘアーだったからでもない。小説の世界から抜け出してきたかのような探偵、まるでシャーロックホームズのような出で立ち。鹿撃ち帽をかぶり、茶と黒のチェック柄で身を包んでいたからでもなかった。俺をまっすぐと捉えるつぶらな瞳。その色に、俺は目を奪われたのだった。
翠眼。グリーンアイだ。
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