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「それもそうだな。失礼した。俺は、高校一年の──」
「ひとはね、年齢がすべてじゃないのさ」
俺の名乗りは、くるりと背を向けてしまった少年の手によって遮られてしまった。少年は中学生か、それとも小学生だろうか。
その背に声をかけようとすると、
「お客様」
と俺の背に声がかかった。
ふり返ると、スーパーの店員が心配そうな顔をしながら立っていた。
「お客様、おケガはありませんでしたか」
きっと、缶詰めの山が崩れる音を聞いてやって来てくれたのだろう。後方にいるもうひとりの店員がテキパキと缶詰めを拾い集めてくれている。俺はすぐに頭を下げた。
「大丈夫です。すみません、山を崩してしまいました」
頭を下げるとき、手に持っていたへこんだサバ缶が目に入った。
「ダメになった分は買い取ります」
「いえいえそんな、大丈夫ですよ」
顔をあげると新たにひとり、店員がにこやかな面持ちで近付いてくる。ほかのふたりの店員も、その店員をすがるような目で見ていた。
「どうも、店長の大島です。弁償だなんてとんでもございませんよ。お客様におケガがなくてなによりです」
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