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「ん、ボクかい? そうだね」
手に持っていた本をじっとみつめる。その本には、『文芸誌、メフィスト』と大きく書かれていた。小説の本だろうか。著名な作家の名前がずらりと並んでいる。その本をまじまじとみつめ、それからじつに少年らしいイタズラな笑みを浮かべた。
「Kさんに名前を訊かれたボクは、咄嗟にメフィスト。ボクの名前は、『メフィストフェレス』だよ。と答えるのさ」
おお、メフィストフェレスとな。どうにも変わった名前をしているものだ。しかしやはりそうなのかと思った。
「なるほど、異国のひとなんだな」
感想を口にもらすと、メフィストフェレスは両手を高く突きあげる。
「ちがうよKさん、そうじゃない。そうじゃないのさ。反応して欲しいのはそこじゃないんだよ。せっかくボクが、国民的探偵アニメになぞらえてミステリアスに正体を隠したっていうのにさ。まずは、そこに触れておくれよ」
「なに? メフィストフェレスさんではなかったのか。偽名なのか?」
ひたいを手で押さえ、ふるふると頭を振り、まるであきれたような声が耳に届く。
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