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クルッと指をふり回し、メフィストは俺の周りをゆっくりと闊歩する。
「Kさんはさ、ファウスト伝説って知ってるかい?」
「いいや」
と首をふると、にやっと口を持ちあげ話しだす。
「メフィストフェレスはね、ファウストの前に現れた悪魔なのさ。悪魔は魔法の力を与える代わりに、その魂をもらう契約を結ぶんだよ」
「おお、魂とは、なんとも物騒な話だな」
それを愉快気に話す少年の姿は背すじに冷たいものを感じさせた。なぜなら少年は俺にとってのメフィストフェレスであると言ったのだから。
くすりと笑い、
「ボクと契約しないかい?」
翡翠の瞳がやわらかくほほ笑む。
「いったいなんの契約だ」
「ボクだってさ。悪魔じゃないんだから、魂をおくれよとまでは言わないさ。そうだね、こうしようよ」
さも名案とばかりに、手のひらを打つ。
「きみに事の真相をみせようじゃないか。だから、ボクにその魂をみせておくれよ。すこしね、きみに興味が湧いたんだよ」
言ってることはだいぶ悪魔染みた物だったが、魂は取られないようだと安堵する。しかしだ、わからない事がたくさんある。
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