一、サバの缶詰め落下事件

23/85
前へ
/387ページ
次へ
「でもまあね。ボクは人間観察が趣味だから、きみのことをみていたんだよ。だからKさんが五秒、謎を考えて飲み込んだのも知っているのさ。きみは目にしたはずだよ」  口の端がにやりと持ち上がる。美少年はまるで悪魔のように、ゆかいそうな笑みを顔に貼り付けていた。 「走り抜けていった子どもが缶詰めの山にも、机にも触れていなかったことを、ね。どこにも触れていないのに山が崩れはじめた。その瞬間を目にした。だからきみは、ふり返って床を確認していたんだよね?」  言われてずばり、その通りだった。たしかにあのぼうやとすれちがった時。ふり返った先で俺がみたものは、机に触れないよう走り去るぼうやと、勝手に崩れ落ちてくる山と積まれた缶詰めだったのだ。 「Kさんが飲み込んでしまったその謎の真相を、このボクがお見せしようじゃないか。そしてそれを知ったきみが、どんな反応をするのかをこのボクにみせておくれよ」
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加