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俺が知らないだけでいつもお出かけ前には天候が変わらぬよう、山の神に祈りのダンスを捧げているかもしれない。こっそりとブードゥーの儀式を施してから外出するのが恒例だったとしても何ら不思議なことではない。そんな想像をしているとにわかに姉の視線が鋭くなり、半眼の瞳でクイッと首をかしげてみせる。
「アンタ、またつまらないこと考えてるでしょ?」
おお、やはり姉はサトリかもしれない。サトリはそのままニヤッと口を持ちあげた。
「それにアンタね。だれがご飯を作ってあげると思ってるのよ。もう冷蔵庫の中はすっからかん。さっさと買い物に行かないと昼も夜も抜きになるけど、それでいいの?」
それを言われると弱い。料理のできない俺にとって姉の料理はまさに生命線と呼ぶに相応しいもの。そもそもはじめから俺に拒否権などはないに等しかった。
ささやかな抵抗も虚しく、
「ん」
と手をだすと、
「よし」
と買い物メモを渡される。
ちらりと目をやってメモの中にカレーのルーという文字を見つけ、口もとを綻ばす。どうやら今日はカレーのようだ。俄然やる気がでてきた。エコバックと財布も受け取り、すっくと立ち上がる。
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