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 彼が、瀬川正敏が亡くなって、わたしは悲しかった。だけど、悲しいはずなのに、涙は出なかった。  告知を受けた正敏が、ベッドの上で黙り込んでいた時も、わたしは何も声を掛けることが出来なかった。 「美沙には心がない。まるでロボットみたい」  小学六年生の時に同じクラスの女子に言われた言葉を思い出す。  おそらく、そうなのだろう。  わたしには、心がない。  だから、何て言葉を掛けたらよいのか分からないし、付き合っている人が亡くなっても、涙を流すことも出来ないのだ。
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