第27話 孤独を共有する者たち

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第27話 孤独を共有する者たち

「ねぇ三澄さん」 「はい、なんですか?華未さん」 「どうして世の中には…平気で人を傷つける人がいるんでしょうね。暴言を吐き暴力で相手を支配しようとする…そんな人達ばかりがのさばり大手を振って堂々とメインストリートを歩き、何も悪いことをしていない者がそんなやつらに怯え肩を狭めて隅を歩かなきゃいけないなんて…。そんなのおかしいのに」 「…そうですね」 泣きながら、華未は言葉を続けた。 「どうしてこんなに生きていくのが辛いんだろうって。無意味に傷つけられ、悲しい想いをして、私が何をしたっていうの!? よっぽど前世で悪いことをしてその報いを受けてるの??そんなの今の私に関係ないしっ。私は幸せになれないの??なったらいけないの!?」 クゥン… 泣きじゃくる華未の頬を舐め涙を拭い、ナナは心配そうに寄り添っていた。 つぶらなその瞳には、悲しみをたたえていた。 「…辛いことがあったんですね」 コクッ 「…同棲してる彼氏が…」 華未は今日あった出来事を話した。 「それは酷い」 「怖かったです。殺されると思った。男の人が本気の力出したら、かないっこないですもんね」 「華未さんはどうしたいんですか?彼とはもう離れたい?それともまだ愛情がありますか?」 「…もう戻りたくありません。顔もみたくない」 「だったら、しばらくここにいたらどうですか?」 「えっ?」 突然の光の提案に、華未は驚いて涙も止まってしまった。 「えっ、いや、あの、それ本気で言ってますか??犬や猫を保護するのとは訳が違うんでっ。仮にもその、まだ知り合って間もないし、異性の方に拾われるなんて私そんな…」 「だって、家に帰ってまたその彼があなたを傷つけるようなことをしたら、そんなのいやです」 うろたえる華未とは裏腹に、光はとても冷静だった。 「それとも、他に行くあてがありますか?」 「残念ながらそれはなくて…」 「じゃあそれまでのルームシェアってことで、いいじゃないですか。華未さんのルームメイトはナナです。僕はそうだなぁ…別室の管理人くらいに思ってもらえたら」 ピスピスピス… ナナも賛成なのか、喜んで尻尾を振っている。 「えーっと…」 状況が理解できず、華未はまだ呆然としている。 「今の華未さんには、心を休めて自分をいたわる時間が必要です。その間に、これからどうするか考えたらいいと思いますよ。身の安全のために、ご自宅に荷物など取りに行くときは僕もついていき、彼が確実にいない時にしましょうね」 「そんな…そこまでしてもらったら…」 「何も気にしないでください。僕がそうしたくて申し出ているだけなので。なので華未さんがいやだったら無理強いもしませんから。でもせめて今日だけでも、あなたをこのまま帰すわけにはいかないです。何かあったら取り返しがつかないので」 「三澄さん…」 そう言ってうつむく光の瞳も、ナナとよく似た悲しみの色を持っていた。 「僕たちはよく似ています。悲しみと時にやり場のない怒りも秘めた孤独を抱えている。だから、ほっとけないんです」 ナナを撫でながら、光は言った。 「この子はね、虐待を受けていたんです」 「えっ…」 「昔の飼い主が酷い人でね。もはやあんなやつ人でもないけど…。劣悪な環境で、自分のストレスのはけ口にナナを使い、日常的に暴力を加えていた」 「そんな…!?」 「何も悪いことをしてないのに。さっき華未さんが言った言葉が、胸に刺さりました。そうなんです、本当に何の罪もないのに苦しんでいる命が…この世界には多すぎる。だから、見過ごせないんです、僕は。僕の大切な人が、最後まで守ろうと戦ったものなので」 「三澄さん…?」 「僕の最愛の人は、殺されました。ナナを虐待していた人に。逆恨みで」 「……!?」 「だからナナは、大切な人の忘れ形見だから、恋人のように特別な存在で、大事な家族です」 ナナを優しく撫でながら見つめる眼差しは、慈愛に満ちていた。 「あの日も…今日みたいに寒い夜でした」
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