あいと目覚め

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 眩しさに智尋の意識が浮かび上がった。  朝と思しき強さの光を目を瞑ったままでも感じる。  起きなければと思いながらも行動に移せない。  妙だ。頭がふわふわとした感じでおぼつかない。 「おはよう智尋」 「んん……」  呼びかけてくる声とマットレスの片側が沈む感触。  それだけで体にじわじわと甘い疼きが回る。  眉根を寄せ目を開けると、玖藍がこちらを見下ろしていた。 「んあっ……!」  彼の藍色の瞳を見つめただけで昨夜の記憶が蘇り、智尋の体が甘やかな快感を伴ってわなないた。  こんなことは今までなかった。  もっと焦るべきだと思いながらも頭は未だ真綿にくるまれたようで、体も上手く動かない。 「玖藍……俺、なんか体が……」  どうにか体を起こして異変を訴えようとするも、言い終わらぬうちに口を口で塞がれ舌が入り込む。 「ん、ふ、んんぅ!」  一方的な口づけだけで体が、脳が、快楽に震える。  気づけば口づけは一方的なものではなくなっていた。  唇が離れるのを、熱に浮かされた瞳で名残惜し気に見る智尋を見て、玖藍は笑みを深める。 「分かる? お前の体がオレを欲しがってること」  上掛けを取られ、智尋の裸身が晒される。  欲望を示す下腹部は半ば勃ち上がっているものの、本当の欲望はもっと体の奥から生じていた。 「俺に、なにしやがった」  これが玖藍の思惑通りならば何を意味するのか。智尋は彼の真意を測りかねていた。 「何か盛ったわけじゃないよ。お前がオレを求めるように導いただけ」 「あっ! うう……!」  先走りで濡れた先端を撫で回されたと思えばその手で胸を揉まれ、力が抜けていく。  智尋のペニスを扱くときに乳首も弄ってくる玖藍を不可解に思っていたが、いつの間にか智尋の胸はじんじんと快感を拾うようになっていた。  周辺でなく乳首を弄って欲しいと思うとそこを捏ね回され、刺激を求めて硬く尖りつつあるもう片側の乳首を口に含まれた。 「あぁうっ!」  甘噛みされ、爪を立てられた刺激を体は快感だと認識する。  快楽はどんどん体の中に溜まっていって智尋を押し上げていく。  女でない自分が胸を弄られて身悶えするなど、数カ月前の智尋に言っても信じないだろうし、今も信じがたい心を置いたまま体だけが貪欲に快楽を求め続けている。  じゅ、と殊更音を立てて吸われた乳首は常よりも大きく色づいたようだったが、智尋は息を整えるのが精々で気づきもしていない。  散々悦楽を与えられたというのに、太腿を割り開かれれば露わになった孔が待ちかねたようにひくひくと収縮する。  前をくつろげた玖藍が自身の陰茎をそこにあてがい擦りつければ、面白いように智尋の体が跳ねた。  やがて先走りに塗れ猛り立った身を後は挿入するだけという段になって、玖藍は欲に塗り潰された黒の瞳に目をやる。 「この先はもう引き返せないよ。続けるならオレはもうお前を離さないし、お前はオレから離れられない。それでも入れてほしい?」  無論引き返させる気など玖藍にはない。選択肢は他を選べなくなってから与えるのだ。  口約束といえど言葉は無意識に彼を縛るだろう。そうやって縛りつけ、絡め取り、逃げ道をなくせばいい。
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